がん患者の会がサルビアの会に

<サルビアの会の命名>

 がん患者の会は、しばらくの間、がん患者家族の会と一緒に愛称なしで続けてきた。そのうちに、ぜひともいい名前をつけて欲しいという声が上がってくるようになった。そのとき、手をかければかけただけ長く良く咲くサルビアの花が一番好きというがん患者UDさんの提案した愛称が、このサルビアの会だ。

 そして、サルビアはラテン語で「癒す」という意味であること、さらに、その花言葉には「知恵、家族愛、尊敬、すべてよし、燃える心」などがあることが分かると、がん患者の会の愛称にぴったりだとみんなが思ったのである。

 患者の会は毎月第三土曜日に開催する。土曜日は当院の休診日である。当院の外来待合室の一角にテーブルといすを並べると、そこがサルビアの会の場所になる。いつも開始時間の午前十時少し前に、私が当院入口自動ドアのスイッチを入れる。

<さまざまながん患者>

 たいていKGさんご夫妻が最初に入ってくる。お二人ともがん患者だ。KGさんは、前立腺がんで長い間ホルモン療法を続けてきた。また、奥さんは肺がんで、手術後なにごともなく5年が過ぎた。ただ、奥さんの肺がんは、見つかってから手術まで3年もの時間がかかった。

 胸部エックス線写真のカゲは、内科医の目にとって、肺がんらしくないものだったという。数か月ごとに胸部のエックス線写真をとり、前の写真と見比べても、あまり大きさに変わりがなかったため、そのまま様子を見るということになって、3年が過ぎてしまったというのだ。

 しかし、やはり少しづつ大きくなっているようなので、がんが確定できたわけではないが、手術して確かめたほうがいいことになった。そして、手術の結果、肺がんであることが確認された。

 つぎに入ってきたのが左腕に包帯を巻いたMYさんだ。MYさんは、子宮がんが左の腋の下のリンパ節に転移したため、そこに放射線治療を行った。がんは消失したが、同時にMYさんの左腕の神経機能も失われた。

 さらに、病巣が消えてなくなった代わりに、リンパの流れが悪くなりリンパ浮腫が起きたのである。これはリンパマッサージで良くなったが、いつも軽く圧迫包帯をしている必要がある。

 したがって、車の運転ができないMYさんは、自営業のご主人の体が空いていれば、ご主人の車に乗せてもらい参加する。そうでなければ、市の巡回バスか友人の車に乗る。

 MYさんは、市内のがん診療拠点病院の緩和ケア病棟で、傾聴ボランティアを続けている。そこで出会ったがん患者を、MYさんはしばしばサルビアの会に誘い出す。きょうは、その「新人」を連れて入ってきた。

 MYさんのすぐ後に、ODさんが入ってきた。ODさんは、現在、主に隣の県のがんセンターで経過を見てもらっている。今、気管がんを手術したあと、両側の肺に転移が見つかっているのだ。ODさんのがんは、腺様のう胞がんという、非常におとなしいゆっくり進むがんである。

 ゆっくり進むがんは治療しても効果がはっきりしないことが多い。だから、ODさんの心配は増える一方で、悩みも減る見込みがない。今、また新しい治療を始めたところだ。

 こうして、しだいに参加者が集まり、会が進んでいく。

 これから、この会に集まってきた人たちの中から、何人かの人に登場してもらい、その人のがんとその人自身のことについて書いていくことにする。同時に、それぞれのがんに合わせて、がんに関する情報を書き加えていく。

 がんと一口に言っても、できた場所によってまったくと言ってもいいほど違いのあることが多い。さらに同じ場所にできたがんであっても、まったく種類の違うがんがある。これから、ここに登場してくるがん患者も、それが平均的ながんの人であるとは限らない。

 いや、むしろ特殊ながんの人が多いかもしれない。少なくとも、ほとんどの人が、がんであることに負けない強い気持ちを持つ人たちであることは間違いがない。さあ、どんな人たちが出てくるか、乞うご期待!

※このブログが本になりました。「がんになって分かったこと~さまざまながんの素顔と元気な患者たち」という書名で、文芸社からの出版です。ネット販売もしています。

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この記事へのコメント

m.t
2010年10月03日 21:43
「サルビアの会」由来を読んで、なるほどなぁ、と思いました!
サルビアの花言葉にぴったりであろう、いろいろな方々のお話、早く読みたいです。

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