もうけた命(NMさんの場合)~治療をやめた後

 点滴も飲み薬もなくなったため、副作用は消え、NMさんの体調はかえってよくなった。

 NMさんはもともと旅行が好きだった。考えてみれば、肺がんが検診で発見されていなかったら、もうとっくの昔になくした命。だとすれば、行きたいと思っていたところには絶対に行ってみたい。少しでも楽しく生きようと思う。だいたい自分が暗くなっていたら、家族中が暗くなってしまう。

 体調が良くなったちょうどこの時、孫が富士山に登ると言ってきた。付き合うことにして、五合目まで登った。この孫が優しい。NMさんが体調すぐれずに横になっていると、必ず声をかけてくる。
「おばあちゃん、だいじょうぶ?元気が出るようにピアノでも弾いてあげようか?」

 NMさんは、自分がこの病気になって長く闘病を続けて来たからこそ、孫が人に優しくすることを覚えてくれたと考えている。自分のがんという病気が、孫の優しさを育て上げてくれた。

 NMさんは、外国にも行ってみたいと思う。アユタヤ、グランドキャニオン、夢が膨らむ。しかし、家族は反対する。
「がんの患者を海外旅行に連れて行くなどもってのほかだ。責任が持てないから、海外などには連れていけない」

 NMさんの家族にも、ほかの人たちが持っているのと同様のがんという病気への偏見があると、NMさんは考えている。

 がんは命に関わる病気には違いない。しかし、本当に具合が悪くなるのは、抗がん剤の治療中か、がんが進んで体中に広がって体力が落ちた時だけだろう。それ以外は、たとえ転移があったとしても、がん患者は普通の人と変わるところはない。

 だから、NMさんは残された時間を余すところなく最大限有効に生きて行こうと思っている。つまり、自分ががんの転移を持つ体だからといって、家族が自分といっしょに海外に行くことをためらうのはおかしいと思う。

※このブログが本になりました。「がんになって分かったこと~さまざまながんの素顔と元気な患者たち」という書名で、文芸社からの出版です。ネット販売もしています。

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