もうけた命(NMさんの場合)~肺の検診

 保健師の言葉に、NMさんは考えた。肺がんなんてあり得ないと思うが、結核だと家族に迷惑がかかる。夫にも、かわいい孫たちにも、病気を移すわけにはいかない。それならば、早いほうがいい。明日にでも診てもらいに行こう。

 決断したらすぐに実行するNMさんは、まず、近くのかかりつけ医に相談した。
「うーん、結核ではないようだが、これは専門のところできちんと診てもらったほうがいい」

 かかりつけの医師は、X線写真を見ながら、本当に異常があるのかないのか判断しかねているような顔を見せながら、NMさんに言った。

 ということは、肺がんの可能性があるということであろうか。NMさんは、すぐに別の総合病院で検査を受けることにした。そこで、胸部のCT写真が撮られた。

「肺には確かに異常なところがあります。よくこんなに小さいものがX線写真で見つかりましたね」
 NKさんの診察を担当した医師が、胸部のCT写真を見ながら言った。

 現在、胸部のX線写真を使った検診には、肺がん検診と肺結核検診の二つがある。つまり、1枚のX線写真を見ることによって、肺がんと肺結核という二つの別個の疾患を発見することを目的とした、二つの検診が行われているのである。

 したがって、精密検査が必要という場合、肺がんと肺結核のどちらなのかが問題になる。それを確かめるためには、検診結果報告書の表題を見ればいい。必ず肺がん検診の結果報告書なのか肺結核検診の結果報告書なのかの記載がある。

 肺がん検診の精密検査では、胸部CT写真で肺がんらしい影なのかどうかを確かめ、必要と考えれば気管支の内視鏡検査が行われる。

 また、痰の細胞診という検査が行われることもある。これはがん細胞が病巣からはがれやすい性質を持つことから、痰の中にがん細胞がはがれ落ちてくることを利用して、がんの診断を行う方法である。肺がんでは、がんが気管支にできた場合や、肺にできたがんが気管支にまで広がってきた場合に、痰の中へがん細胞が出てくることが多い。

 必ずしも肺がんだからといって痰の中にがん細胞が出てくるとは限らないが、痰で検査するのは簡単であり、がん細胞が発見されればそれでがんの診断が得られるため、痰の細胞診という検査法は、肺がんの診断法として簡便で有用な診断法である。

 現在、日本の肺がん検診は、胸部X線写真と痰の細胞診検査の二本立てで行うことになっている。

 肺結核の場合は、同じように胸部X線写真やCT写真で結核らしいかどうかを確認した後、こちらは最初に痰の中に結核菌がいるかどうかを調べる。結核の場合、痰の中に結核菌がいると、咳をしたときに結核菌を周囲にばらまく可能性があるので、他の人に結核を伝染しやすい状態ということになる。

 そのため、感染の可能性を判断するための痰の検査は、肺結核の診断において最も重要な検査なのである。現在では、結核菌が少なくても確実に発見することのできる鋭敏な検査法が開発されている。結核菌の遺伝子のかけらを見つけて、診断することができるのである。

 いずれにせよ、肺結核が疑われた場合、痰の中に結核菌がいないことが確かめられれば、ひとまず安心である。

 また、同じ「けんしん」と言われるが、「健診」と「検診」は違うものである。

 前者の「健診」は、健康診査あるいは健康診断の意味で、身体測定から始まり、血圧測定、尿検査、血液検査など、一般的な検査を行って、健康に問題があるかないか、あるとすればどのような程度かを見るものである。通常、「けんしん」と呼ぶものはこれである。

 一方、「検診」は、検査診断の意味で、ある特定の疾患の有無を検査して調べるものであり、がん検診や結核検診は、その代表的なものである。骨そしょう症検診などもある。

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