治療させてもらえなかった乳がん(SIさんの場合)~乳がん治療と痛みの消失

 SIさんの治療は、飲み薬によるホルモン療法を中心に進められた。

 腫瘍はかなり大きくなっていたため、点滴による通常の抗がん剤治療も加えられたが、SIさんのからだに合わなかったと見え、全身が真っ赤になるほどの強い皮膚炎の副作用が出たため中止された。

 したがって、SIさんはホルモン療法のみを続けることになった。SIさんのがんはホルモン感受性乳がんだったので、ホルモン療法は効果があった。薬を飲み続けるうちに、赤く固く腫れていた乳房は、しだいに赤みが取れ、また軟らかくなっていった。もちろん、痛みもなくなった。

 そして1年後には、ほとんど正常な左の乳房と違いがなくなった。ただし、乳房の奥をよく触るとしこりが残っていた。また、乳房の下方の胸部には、まだ皮膚の赤みが残っていた。

 SIさんは、主治医に尋ねた。
「先生、しこりが残っていますが、手術はできないんですか?」

 主治医は、しばらく考えて言った。
「あなたのがんは皮膚の中をかなり広がっているから、手術をするとすれば皮膚やその下の部分を大きく切り取らなければならなくなる。そうすると、そのあとに皮膚を含めた大きな組織の移植をしなければならなくなる。場合によっては、肋骨も何本か切り取ることになる。その手術は、ここでは無理だ」

 SIさんは、その主治医の言葉を聞いて、手術はあきらめた。SIさんにとっては、薬でここまで治してもらったのだから、文句はない。

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