がん友(MYさんの場合)~転移の治療とステロイドの副作用

 しかし、脇の下の転移巣は増大し続けると同時に、左腕全体がむくみ、しかも動かし難くなってきた。リンパ浮腫と神経マヒである。

 リンパ浮腫は、乳がんの手術を受けたひとにもしばしば起こる。脇の下のリンパ節を取る手術によってリンパ管や細い血管が一緒に切除されるため、その手術の後に腕からのリンパ液や血液の戻りが悪くなり、腕全体がむくんでくる。しばしば神経も傷つくため痛みを伴うことが多く、見た目が悪いだけでなく、痛く重く、動かすのも大変なつらい症状である。

 MYさんの場合は、脇の下のリンパ節転移が増大したことによって、リンパ管や血管、そして神経が壊され、乳がんの手術後と同じような状態になった。

 神経のマヒ症状は、それこそがんが神経を侵している隠さざる証拠である。がんによって神経が侵されているのだ。

 MYさんは、放射線治療を受けることになったが、一時楽になっていた痛みが再度悪化して、耐えられない痛みに襲われることも多くなってきた。がんが神経を蝕んでいるために起こる、この痛みは、オピオイドでも治まらないことが多い。この痛みには放射線治療が最も効果を発揮する。

 この時点で撮られたCT写真によると、がんが脇の下のリンパ節だけでなく、頚部のリンパ節にも広がり、まとまって大きなしこりになっていることが分かった。この中に神経や血管が巻き込まれ、痛みやむくみが出ている。

 MYさんは、この腕を切り取ってもらいたいと思った。この腕がなくなれば痛みもなくなる。日記に「痛い」と書く日があったが、それはまだましな日だった。本当に痛みのひどい日は、日記を書くどころではなかったからだ。こんどこそ、本当に自分の命はなくなるのではないかと思った。

「放射線治療は後で効果が出てくる。かならずよくなるよ」
 放射線治療の担当医は優しく言った。

 放射線は、体の内部に入り込んでがんを殺す。ただし、正常細胞にも影響が及び、治療部位には炎症が起こる。つまり、放射線の当たった部位は、赤くなり、熱を持って痛む。

 その放射線治療の副作用を抑えて痛みを取るため、MYさんには炎症を抑える強い作用を持つステロイド剤が投与されていた。しかし、これを続けるうちに、MYさんの体は風船のように膨れ上がった。ステロイド剤の副作用である。

 ステロイド剤を怖いと思う人は多い。いろいろな副作用を持つからである。その副作用のひとつが、この肥満である。上半身、とくに顔と肩がふくれる。お月さまのような真ん丸い顔になる。だから、この副作用をムーンフェイスという。

 しかし、ただ太るだけではない。通常でも肥満と糖尿病は関係が深いとされているわけだが、ステロイド剤を長期間投与した場合も、糖尿病の発生が増える。ステロイド剤にはそれ以外にも多くの副作用があるが、ステロイド剤は炎症やアレルギー反応などによるさまざまな症状を抑える作用を持つため、うまく使うと魔法のようなすばらしい作用を発揮する薬である。

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