がん友(MYさんの場合)~抗がん剤治療の受け入れ

 PETの検査では他の場所にはっきりした転移は見つからなかった。

 主治医は言った。
「MYさん、ほかに転移らしいものは見つからなかったよ。よかったね。だとすれば、今、抗がん剤の治療をやれば、左の腋の下の転移巣に対してだけでなく、他の場所にあるかもしれない転移の芽に対しても抗がん剤は効果を発揮してくれる可能性があると思う。つまり、完全に治る可能性がある」

 主治医は抗がん剤の治療を強く勧めた。MYさんは、この主治医の話を聞いて、はじめて抗がん剤治療を受ける気になった。

 抗がん剤の治療の目的は二つある。第一は、まだ見えない転移の芽を摘むためである。これは、手術に合わせて行う方法が一般的である。手術によって大もとの病巣は取り切ったと思われても、がんのこわいのは見えない転移の芽が全身にばらまかれている可能性のあることである。

 見えない転移をつぶすには全身に行き渡る抗がん剤を使うことが理にかなっている。しかも、まだ見えないような小さながんの病巣ならば、効きやすいだろう。こうして、手術の後の追加療法として、抗がん剤が使われる。これを術後補助化学療法という。

 つぎが明らかながんを治すため、少なくとも完全に治すことはできなくとも小さくするためである。通常、手術の不可能ながんに対して、放射線治療と一緒に行うか、あるいは単独で抗がん剤を使う。しかし、この治療には限界がある。
 
 前に述べた通りだが、現在、分子標的治療薬という新しい抗がん剤ができた。がんの増殖に関する多くの研究の結果、その増殖に関わるがん細胞内の特定の分子をターゲットにした薬剤がつくられるようになったのである。

 この分子標的治療薬には、従来の抗がん剤よりは効果のあるものが多い。ただし、この薬剤には相性がある。効果の期待できる相手を選ぶのである。いずれにしても、抗がん剤だけでがんをやっつけるには、もう少し時間が必要である。

 MYさんには、プラチナ製剤といわれる抗がん剤を使った点滴治療が始められることになった。1か月に1回、3回くり返す予定が立てられた。

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