がん友(MYさんの場合)~抗がん剤の副作用

 今ではどこのがんの治療でも使われる抗がん剤が、このプラチナ製剤である。これはある程度の効果を期待できる薬だが、副作用が強い。まず、第一に強い吐き気を催す。つぎに腎臓に強いダメージを与える可能性が高い。したがって、それらの副作用を抑えるための対策が必要である。

 とくに、この抗がん剤から腎臓を守るためには、同時に多量の水分を点滴することが必要とされる。この薬剤が体内から腎臓を経て体外に出される時に、血管内の水分量を多くすることによって尿の量を増やし、その濃度を薄めて、腎臓への副作用を軽減する。

 吐き気止めは、この点滴の中に混ぜればいい。

 通常、この抗がん剤を点滴するときには、薬剤を点滴で入れる少し前から、点滴を始める。別のいい方をすれば、前もって水分だけの点滴を始め、尿の量が増えて抗がん剤が薄まるようになってから、抗がん剤を点滴するというやり方になるのである。

 この点滴は、体内に入った薬剤がほとんど消えるまで続けられる。多くの場合、このプラチナ製剤に加えて別な種類の抗がん剤を併用することが多いので、通常、4日前後点滴を続けることになることが多い。

 この一通りの治療はドイツ語を使って1クール、または英語で1コースと数える。そして、これを3~4週間毎に数回くり返し、効果を見る。

 つぎに多い副作用が白血球減少である。これは、薬剤投与数週後に起こることが多い。そして、当然だが、薬剤の投与回数が増えるほど、これらの副作用は強く出るようになる。これらは、薬剤の投与が終われば、次第によくなる。 

 だが、白血球は抵抗力の中心なので、これが減ることは時として病原体の侵入を抑えられないことになり、命に関わることになることもある。MYさんは、このことを最も恐れていた。

 一方で、プラチナ製剤には、他の抗がん剤の副作用としてしばしば起こる脱毛が少ない。

 MYさんにも点滴が始まると同時に吐き気が起こった。今になって、またつわりを経験しているような感じだ。

 そして、だるい。このだるさは単なる疲れとは違う。どんなやり方をしても体を動かせないような感じのだるさである。MYさんは、そのまま地獄へ引きずりこまれるようなだるさだと思った。点滴治療が終わっても、MYさんは数日間そのままベッドに横になっていた。

 同室には、同じ点滴治療を受けている患者が多かった。同じがん治療の苦しみと戦う仲間の「がん友(とも)」が、また増えた。

 その中には、がん治療の先輩もいる。したがって、抗がん剤の副作用についても「がん友(とも)」から教えられることが多かった。脱毛についても、「かつらはいらない。帽子をかぶっていればそのうちに生えてくるよ」と聞いた。

 MYさんは、「がん友(とも)」の住所録を作らない。それは、作ってもすぐに消さなければならなくなることが多いことに気づかされたからである。「がん友(とも)」は、その電話番号やメールアドレスを携帯電話に保存するだけである。

 それでも、久しぶりに連絡を取って、連絡が取れないときには一瞬どきっとする。

※このブログが本になりました。「がんになって分かったこと~さまざまながんの素顔と元気な患者たち」という書名で、文芸社からの出版です。ネット販売もしています。

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