がんなんかに負けてたまるか(KNさんの場合)~最後のゴルフコンペ

 KNさんは、がんが進行しても、自分が生きるために、大好きなゴルフを続けた。KNさんはすでに70歳を過ぎていたが、ゴルフの仲間内では一番若かったので、ずっとゴルフコンペの幹事役を引き受けてきた。

 最近、背中に痛みを感じることが増えたが、痛いと思って何もやらないとよけい痛くなると思った。

 痛いから何もできないという人が多いが、そうではなくて、何もできないと思ってしまって何もやらないから、痛みがひどくなるのだとKNさんは思う。だから、KNさんは痛くてもカラ元気を出してゴルフコンペの幹事を続けてきた。

 ただ、今回はへとへとに疲れた。ゴルフ後のパーティーを終えたあと、今までは最後まで残って、参加した人たち全員と必ず握手を交わしてから帰ったのだったが、今回は真っ先に奥さんの運転する車にへたり込んだ。KNさんにとって、これが最後のゴルフコンぺになった。

 KNさんの肝臓と肺の転移巣は確実に大きさを増していた。背中に近い肝臓の転移巣の大きくなっていることが痛みの原因だった。

 その痛みがさらに強くなってきた。つまり、肝臓の転移巣がさらに大きくなっていた。モルヒネ剤が増やされた。また、肺の転移巣も大きくなり、胸水も貯まり始めていた。モルヒネ剤が増えたあと、痛みは楽になった。

 そして、最後のゴルフコンペの幹事をやり通した3週後、肝臓の転移が大きくなるにつれて肝臓の働きが低下し続けていたKNさんは、その朝いつものように自宅の庭をながめたあとベッドに戻ったが、そのまま二度と起き上がることはなかった。

 KNさんはがんと戦うことをやめたのだろう。その夜、すべてを受け入れたと言っているような穏やかな顔で、静かに息を引き取ったのである。

 すべてのがんの治療をやめて1年半、最初に転移が見つかってから6年半、そして大腸にがんが見つかってから7年半が経っていた。

※このブログが本になりました。「がんになって分かったこと~さまざまながんの素顔と元気な患者たち」という書名で、文芸社からの出版です。ネット販売もしています。

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