がんとの長いつきあい(KGさんの場合)~「もう、たとえ再発しても構わない」

 確かに今までは、もし再発したらと考えると大学病院から離れることは不安だった。

 しかし、KGさんは再発しても構わないと考えるようになった。もうすでに80歳を越えた。いま万が一がんが再発しても、命に関わるような状態になるまでには、さらに数年以上かかるだろう。とすれば、もう十分だ。

 KGさんと同居しているお孫さんも大きくなった。あるとき、そのお孫さんが言った。

「わたしは大きくなったらおじいちゃんみたいになりたいな」

 KGさんは聞いた。

「どうして?」

 お孫さんは言った。

「だって、いつも何もしないでいいんだもん」

 KGさんはあっけにとられた。たしかに、前立腺がんの手術を受けてからは、がんについてだけを考え、ほかには何もやってこなかった。「孫はよく見てるな」と思った。

「もう自分と妻のがんについて考えるのは止めることにしよう。もう大丈夫だ。たとえ再発してもいい。もし再発したら、そのときに考えればいい」

 そう思うと、KGさんの気持ちはさらに楽になった。

 ホルモン剤を止めてからもPSAは相変わらず低いままである。動悸は消え、手の震えも気にならなくなった。KGさんは、やはり気持ちの問題だったのかもしれないとも思った。

 妻も肺の手術を受けてからすでに8年が経った。いまは1年に1回の外来受診ということになっている。妻の肺がんも、診断の前に2年かかったことを考えると、自分と同じ10年だ。

 自分の前立腺がんと妻の肺がんとの、10年におよぶ長い長いつきあいだった。KGさんは、がんの再発を考えるのはもう終わりにすると決めた。

「がんが再発しても構わない。もし本当にそうなったら、考えるのはその時でいい」

 KGさんは、今、心底そう思っている。

※このブログが本になりました。「がんになって分かったこと~さまざまながんの素顔と元気な患者たち」という書名で、文芸社からの出版です。ネット販売もしています。

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