胃の手術なんか受けるんじゃなかった(THさんの場合)~THさんの最後の満足

 外来の担当医が言った通り、入院後すぐに酸素吸入を始め、それだけでずいぶん楽になった。

 病室の中にトイレと浴室があったので、酸素を吸いながらなんとかすべて自分で済ますことができた。自分で身の回りのことが何でもできることがTHさんにとっては最もうれしいことだった。

 入院して酸素吸入を始めてから、不思議なことに食べたものも胃を通過するようになったようだ。THさんが心配した点滴は必要がないように思われた。THさんは、久しぶりにおなかがすいたと感じた。

 病室に来ていた奥さんにTHさんは言った。

「お好み焼きが食べたいな。いつもの店のやつを買ってきてくれないか」

 奥さんは言われた通りのものを買って戻って来た。THさんは、うれしそうにそれを食べた。まるで病気になっていることを忘れさせるような久しぶりの食べ方だった。奥さんは安心した。 

 しかし、THさんの肺の転移巣は確実に大きくなっていた。たまった胸水は増え、肺だけでなく心臓も圧迫していた。

※このブログが本になりました。「がんになって分かったこと~さまざまながんの素顔と元気な患者たち」という書名で、文芸社からの出版です。ネット販売もしています。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック