家族の絆(TNさんの場合)~退院へ

 担当医はいった。

「TNさん、毎月私の外来を受診して下さい。それに、なにか具合の悪いことがあったら、いつでも緊急外来を受診してください」

 TNさんは答えた。

「分かりました。でも、緊急で来なきゃあならないようなことには、なりたくないですね」

 TNさんはゴルフが好きだった。この病気になって、タバコとお酒はやめた。だから、残る楽しみはゴルフだけだった。いつゴルフができるようになるだろうかと思った。

 退院してまもなくは、体力の回復に努めた。ずいぶん弱ったものだと思う。体重が10キロ近く減った。歩くのがやっとという感じさえした。

 家には次女がいる。訳あって、夫とは数年前に別居した。長女は、去年結婚して近くの町に移った。その次女が、一人でTNさんの身の回りの手助けをしてくれた。

 次女は本当にうれしそうだった。そのまま死んでしまうのではと心配した母が、無事家に帰って来られたのである。次女は、母の役に立つことなら、なんでもやってあげたいと思った。TNさんも、本当にありがたいと思った。

 TNさんは、ウォーキングマシンを使った歩くリハビリに励んだ。3か月もすると、手術前と同じくらいに歩けるようになった。体重も3キロほど回復した。

 TNさんは思った。

「そろそろいいかな?ゴルフの予約をしよう」

 TNさんは、ゴルフ練習場に行って久しぶりにゴルフクラブを振ってみた。いい感じに振ることができた。TNさんは仲間と一緒にゴルフ場の予約をした。

※このブログ(「KWさんの場合」まで)が本になりました。「がんになって分かったこと~さまざまながんの素顔と元気な患者たち」という書名で、文芸社からの出版です。ネット販売もしています。

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