家族の絆(TNさんの場合)~家族総出の最後の介護

 家族旅行から帰った後、長女夫婦が定期的に泊まりにくることになった。

次女は、抗うつ剤が増えてから、ときどき薬の管理を失敗するようになった。母親に渡すべき薬を間違えるようになったのだ。次女を休ませてやる必要があるとTNさんは感じていた。

 家族旅行に行って本当によかったと思った。夫との別居、そして長女の結婚の後、途切れそうになっていた家族の絆を、再びつなぎ戻すことができたと思った。

 しかし、TNさんの痛みは、さらに激しくなってきた。そして、水分でさえのどを通すのがやっとの状態になった。少し飲み込んだだけで、水は気管に入ってしまう。すると、レスキューのモルヒネ剤を飲むのさえ困難になる。

レスキュー剤を坐薬に変更した。しかし、痛みがどうしても止まらない状態が続くようになった。家族総出の介護も、この状態ではどうしようもなくなった。TNさんは、仕方なく緩和ケア病棟に入院することにした。

 緩和ケア病棟に入院後、肺炎が起きた。TNさんの食道はがんでほとんどつまってしまったが、さらに気管までが圧迫されて狭くなっていたのだった。

モルヒネの増量で痛みが楽になると同時に、気管の圧迫で起こった肺炎による呼吸困難も、あまり感じなくなってきた。これが、モルヒネ剤が死期を早めると言われるゆえんのひとつである。

TNさんは、そのまま眠るように息を引き取った。入院後1週間も経っていなかった。モルヒネ剤は死期を早めたかもしれないが、TN さんの苦しみを間違いなく和らげた。

~~これで「家族の絆(TNさんの場合)」は終わります。つぎはどんな人の話でしょう?~~

※このブログが本になりました。「がんになって分かったこと」(副題「さまざまながんの素顔と元気な患者たち」 )という書名で、文芸社からの出版です。ネット販売もしています。

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