手術はイヤ(THさんの場合)~あまりに早かった死

 睡眠薬が入るとすぐにTHさんは眠りについた。THさんのご主人は安心した。これで昼には起きていられるようになるのだろう。

 ところがTHさんは、つぎの朝になっても目が覚めず、ずっと眠ったままだった。声をかけてもピクリともしない。

 THさんのご主人は主治医に頼んだ。

「まったく反応がありません。これは薬の効きすぎです。点滴には睡眠薬がまだ入っているんですか?」

 主治医は答えた。

「そうですね。効きすぎですね。睡眠薬はすぐに止めます」

 睡眠薬は中止された。しかし、THさんは眠りから覚めなかった。そのため、モルヒネの点滴も中止された。しかし、それでもTHさんは眠ったままだった。

 そして、睡眠薬の点滴が中止されてから2日目の夜。THさんは一瞬目をあけ、なにかを言おうとしたようだったが声にならず、そのまま息を引き取ってしまった。

 肝臓の機能が急に悪化したことが原因だろうと主治医から話された。

 THさんのご主人にとって、その死を受け入れられるはずはなかった。妻に対して行われた治療は、すべて後手に回っていた。なにもかも、うまくいかなかった。そして、あまりにも早すぎる死だった。

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