胸にふたつのしこりが(SSさんの場合)~初めてしこりに気づく

 やや太り気味のSSさん(72歳)は、いままで病気という病気をしたことがなかった。ただ、血圧が高いので降圧剤を朝に一粒のんでいるだけだ。

 また、ご主人も心臓が悪く、定期的に検査を受けながら薬をのんでいる。だから、いつもふたりいっしょに私のところへ診察を受けに来る。SSさんが、ご主人の見守り役だ。このところ、ご主人の具合はいい。

 そのSSさんが、ある日、自分の胸を何気なく触って、固いしこりができているのに気づいたのだ。しかも、しこりは2個ある。

 SSさんは思った。「いったいなんだろう。痛くもかゆくもない。これが乳がんで、転移してるのかな?」そう思うと、SSさんはいても立ってもいられなくなった。その夜は、本当にがんだったらどうなるんだろうなどと考えると、眠るどころではなかった。早く朝が来てほしいと思うばかりだった。

 翌日、診療の開始時間を待たずに、SSさんは診察を受けに当院に来た。いつもはご主人を先に入れるのに、今回はSSさんが診察室に先に入って来て、いきなり口を開いた。

「先生、大変です。私、右胸に固いしこりを見つけたんです。痛みはありません。しかも、1個ではなく、2個あるんです。いったいなんでしょう?がんじゃないでしょうね?」

 私は答えた。

「どうでしょうね。とにかく診察してみます。胸を見せてもらいますよ。ベッドにあおむけに寝てください」

*このブログが「がんになって分かったこと~さまざまながんの素顔と元気な患者たち」(文芸社)という本になっています。どうぞ読んでみてください。

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