どうして私が胃がんに?(UEさんの場合)~久しぶりの家

 家でベッドに横になったUEさんは、久しぶりの家の空気を深々と吸い込んだ。病室のよどんだ匂いのする空気はない。消毒薬の匂いもない。やっぱり家はいいとUEさんは思った。

 ただ、UEさんはご主人に言った。

「点滴と鼻から入った管が邪魔ね。これがなんとかなればねえ」

 ご主人は答えた。

「そうだよね。あした先生が往診してくれるから、その時聞いてみよう」

 UEさんの家の近くには、ご主人のお母さんが長男夫婦と一緒に住んでいる。ご主人はお母さんをUEさんの介護には関わらせないことにした。また、大学生の一人息子がいるが、ご主人はこれも母親の介護は無理と考え、好きにさせることにした。

 ご主人は会社に介護休暇の申請をして承認され、少なくとも3か月間は休めることになった。したがって、UEさんの介護には、ご主人が一人で専念することになった。

 UEさんはご主人に言った。

「私、生きるからね。あなたとほかの家族みんなのために生きるのよ」

 ご主人は大きくうなずいて答えた。

「そうだね。オレも頑張るよ。ずっとキミに介護が必要だったら、オレは会社を辞めてもいいと思ってるんだ」

 UEさんは「会社を辞めるなんて、それはない」と思ったが、口には出さなかった。代わりに、つぎのように言った。

「ありがとう。私、本当に頑張るよ」

*このブログが「がんになって分かったこと~さまざまながんの素顔と元気な患者たち」(文芸社)という本になっています。読んでみてください。

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