肝転移のある直腸がん(CBさんの場合)~手術後の苦痛

 手術の直後の痛みはCBさんにとってこんなものかというほどのものだったが、つらいのは吐き気がとまらないことだった。

 そして、そのうちに胸が苦しくなってきた。これはCBさんにとって予想外のことだった。このためによけい苦しみを感じた。

 肝臓の手術のあとは、炎症が胸部に及ぶ。肝臓の上にある横隔膜は胸部と腹部の境にある薄い膜なので、肝臓の手術後の炎症が簡単に広がってしまう。横隔膜の上をおおっている胸膜に炎症が起こるのである。

 胸膜は、炎症を起こすと水が貯まる。胸水である。これが肺を圧迫するので、息が切れる。CBさんにもこの症状が出た。

 CBさんは奥さんに言った。

「こんなに苦しいなら、手術は受けるんじゃなかったと思うよ。でも、手術でがんは全部取り切ったって聞いたから、これで治るなら頑張るしかない」

 奥さんは言った。

「あなたが決めた手術だわ。頑張るしかないわよね」

 CBさんは熱がなかなか下がらなかった。奥さんはこれが気になっていた。

「あなた。キズが化膿してるんじゃないの?先生はなんて言ってるの?」

 CBさんは答えた。

「先生はなにも言ってないよ。だから、別にオレはなにも先生には聞こうと思わないよ」

 奥さんはいらいらしてきた。

「いつもそうなんだから、あなたは。だから、私が先生に聞くしかなくなってしまうんじゃないの。そうすると、先生からは嫌われる。どうしても熱が下がらなかったら、私が聞くしかないわね」

 肝臓の手術のあと、胸膜炎や腹膜炎が起こりやすいので、熱もなかなか平熱まで下がらないことが多い。CBさんの場合もそうだったので、主治医はとくに問題にしていなかったのだ。

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