肝転移のある直腸がん(CBさんの場合)~退院へ

 その後、日が経つにつれてCBさんは順調に回復し、食事も摂れて息も切れずに歩くことができるようになった。むしろ、おなかが空くようになった。

 CBさんは病院の売店に向かった。甘いものが無性に食べたくなったのだ。売店の棚からパンを取ってレジへ持って行った時に、売店に入って来る奥さんの姿を見た。

 奥さんもCBさんを見つけた。

「えーっ、なによ。先生がいいって言ったの?」

 CBさんは答えた。

「別に。しばらく食べられなかったから、体重が10キロ以上減ってしまった。もうなにを食べてもおなかの具合は悪くならないし、無性に甘いものが食べたくなってね。だから、ここでこれを買った」

 そう言いながらCBさんは買ったばかりのパンを差し出した。

 その後まもなくCBさんの退院が決まった。手術後5週間が経っていた。が、まだ人工肛門はそのままだった。もう少し様子を見て、完全に心配がなくなってから閉じると言う。

 CBさんは主治医を完全に信じ切っている。奥さんに言った。

「がんは全部治してもらった」

 奥さんは、「まったく疑うということを知らないひとだ」と言い出しかけたが、やめた。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック