肝転移のある直腸がん(CBさんの場合)~手術へ

 家族全員の反対を押し切り、CBさんは手術を受けることを主治医に申し出た。

「先生、私は、もう抗がん剤治療はたくさんです。手術でなんとかなるという先生の言葉を信じます。よろしくお願いします」

 奥さんはなにも言わなかった。

 主治医は言った。

「CBさん、腸と肝臓の手術を一度にやるのは大変ですが、どちらもなんとか取りきれると思います。手術のあと、CBさんも大変ですよ。お互いがんばりましょう」

 こうして行われたCBさんの手術では、主治医の言ったようになんとか予定通りにすべてを取り切ることができた。

 直腸は、がんの部分を切り取り、さらに周囲のリンパ節をすべて取って、残った大腸と直腸を縫い合わせることができた。また、肝臓の転移は実際に触ってみると7個だった。それらもすべて取ることができた。

 最後に、人工肛門をつくり、手術が終わった。11時間に及ぶ大手術だった。人工肛門は、念のためにつくった一時的なもので、からだの具合がよくなったら閉じる。

 手術の間、CBさんの奥さんは生きた心地がしなかった。手術が無事終わりましたという主治医の声は、このまま聞くことはないのではないかと思うほどだった。奥さんにとって11時間はとてつもなく長い時間だった。

 手術室から出てきた主治医の姿を見ると、CBさんの奥さんの目からは涙があふれ出た。「無事に終わりました」のあとの主治医の言葉は、奥さんの耳にはなにも入っていなかった。

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