自分はどうなってもいい~救急車を帰す

 その年の12月になると、STさんは背中に強い痛みを感じるようになった。

 また、頬のしこりはますます大きくなり、頬からぶら下がるような恰好になっていた。さらに、左側の頸部には別のしこりを触れるようになってきた。

 加えて背中のあまりの痛さに耐えられなくなり、うなり声を上げるようになった。それを聞いた両親は心配でたまらなくなり、父親が二階に駆け上がりSTさんに聞いた。

「どうした?痛いんなら救急車を呼んであげるよ」

 STさんは答えた。

「救急車なんかいらないよ。僕はもうだめだよ。病院には行かないよ」

 STさんがそう答えた時に、父親は左頬のこぶが異常に赤く増大し、ところどころ穴が開いたようになってまるでぶどうの房のような状態になり、しかも腐ったような異様なにおいを発しているのが分かった。

 父親は決めた。

「救急車でなんとしても病院へ運んでもらおう」

 救急車を呼ぶと、すぐに救急車が到着したが、STさんは動こうとしなかった。

「僕のために救急車を呼ぶなんて、無駄なことだよ。僕はもう終わりだ。もっと本当に救急車の必要な人がいるはずだよ。そっちに行ってもらうのがいい。僕は病院には行かないよ」

 STさんはとうとう救急車には乗らなかった。しかし、痛みは続き、うなり声を上げ続けなければじっとしていられなかった。父親は考えた。

「病院に行かないなら、往診で先生が来てくれれば見てもらう気になるんじゃないだろうか」

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