自分はどうなってもいい~週末に起こったこと

 その夜、STさんは久しぶりにすぐに寝つくことができた。夜中に痛みがぶり返して目覚めたが、すぐに座薬を使った。すると、痛みは少し楽になり、また眠ることができた。

 STさんは、翌日、朝起きてみるといつも出るはずの尿が出ないことに気づいた。ただ、最初は気に留めなかった。しかし、そのあともまったく出る気配がない。

 とうとう夜になってしまった。下腹が張って苦しくなっても、尿は出ない。STさんは、月曜日には私の診察があるので、それまで我慢しようと考えていたが、もうどうにも我慢ができなくなり、とうとう叫んだ。

「父さん、母さん、おしっこが出なくて苦しい。救急車を呼んで!」

 両親は驚いた。今まで、病院には絶対行かないと言っていた息子が、自分から救急車を呼べと言ったのだ。すぐに、救急車を呼んだ。

 救急車はまもなく到着し、救急指定病院へ直行した。STさんはそのまま入院することになった。

 両親は、これでほっとした。

「とりあえず入院できた。これでよかった」

 すぐに膀胱内に管を差し込み、そのまま留置された。

 ただちに検査が行われ、やはり脊椎は転移により壊されて、そこから脊髄まで腫瘍がひろがったため、下半身まひと膀胱機能と排便機能が失われてしまったことが分かった。

 月曜日に、父親から私に電話があった。

「先生、息子はあのあと土曜日から尿がまったく出なくなってしまったんです。それで、日曜日に救急車を呼び、入院しました」

「息子が救急車を呼んでくれと言ったんです。びっくりしました。先生から治療を受けたことで、医療に対して閉ざされていた心が開いたんだと思います。とにかく入院してくれたので、安心しました」

 私もそれでよかったと思った、もちろん、そのまま最後まで私が診ていくつもりだったが、入院して診てもらいたいと思っていたご両親の気持ちが、それで休まるならそれが一番だと思ったのだ。

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