自分はどうなってもいい~STさんとの初めての会話

 STさんは竹刀を杖代わりにして体を支え、父親に背中を押されてゆっくりと階段を上って行った。

 その背中を見ると、第4から5胸椎のあたりで折れたように前に曲がっているのが見えた。痛みと足に力が入りにくいのとで、階段を上るのが本当につらそうだった。

 やがて、二階に落ち着いたらしく、父親が戻ってきて言いました。

「息子が、話をするだけならいいと言ってます。先生、どうぞ」

 それを聞いて、私は階段を上った。

 部屋をのぞき込むと、STさんは入口近くで敷蒲団の上に座っていた。部屋はきれいに片付いていた。左の頬には直径10センチメートルもあろうかと思える大きなこぶがぶら下がっているようなのが分かった。

 また、左の頸部にはリンパ節が腫大したと思われるこぶが数個できていた。さらに、背中は前述のとおり、第4~5胸椎のあたりで折れ曲がっているように見えた。

「どうです?診察させてもらえませんか?」

 返答はなかった。私は言った。

「そうですか?では、きょうはこれで帰りますが、いつでも診てもらいたいと思ったら、連絡をください。すぐに来ますから」

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