自分はどうなってもいい~STさんの家での手術

 私は、こぶの付け根のまわりのひげを剃っておくように言い、診療所へ戻った。

 STさんの家にとって帰すと、STさんはこぶの付け根のまわりのひげを剃って横になっていた。

「では、このままベッドの上でこぶを切り取る手術をします」

 簡易ベッドなので、低くて手術をやるにはあまりいい体勢ではなかったが、切除するこぶの茎の部分に局所麻酔剤を注射し、2本の鉗子(臓器をはさむ手術道具)でしっかりとはさんだ。

 そして、その鉗子の間にメスを入れ、こぶを切り取った。切り取ったあとの皮膚は、しっかりと縫い合わせることができた。くさい重たいこぶから解放されたSTさんは、初めて笑顔を見せた。

 ただ、手術の間、同じ姿勢でいたためか背中の痛みが増したようだった。

 頸部のリンパ節が腫大したと思われるしこりは固く、頬の悪性腫瘍の転移によるものと思われた。だから、背中の痛い部分は、脊椎にも転移を起こし、そのために背骨が圧迫骨折を起こしていると考えるのが妥当だと思われた。

 痛み止めはモルヒネ剤を使うのがいいと考えた。ただ、きょうは金曜日の夕方なので、週明けからモルヒネ剤を投与しようと思った。

 私が言った。

「無事こぶが取れてよかったですね。つぎは痛みの治療です。きょうは飲み薬と座薬を出しておきます。毎食後に痛み止めを飲んでください。それで不十分な時には、座薬を使ってください。月曜日に、また来ます」

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック