自分はどうなってもいい~STさんのご両親との話

 STさんは、最期を迎える直前、自分で折った千羽鶴の束をご両親に渡しながら言ったと言う。

「これは、ここに入院してから毎日折ってきたもの。やっぱり入院してよかった。いろいろ迷惑をかけてきたけど、これでやっと静かになれる。ありがとう」

 お母さんは言う。

「やっぱり、あの子は優しい子でした。千羽鶴は病人に送るものなのに、私たちは病人のあの子からもらってしまいました」

「あの子は誰にも迷惑をかけたくないって気持ちが強くなって、入院もしたくないということになっていたようです。あの子の閉じた気持ちを開いてくださった先生に感謝します」

 私は答えた。

「何が一番よかったのかは分かりませんが、確かに往診してこぶを切り取ったことがよかったんでしょうか」

「ただ、そのあとに腫瘍が脊髄を壊してしまい、下半身のまひを起こすことになってしまいました。あの手術が、そうなるのを後押ししてしまったのかもしれません」

 ご両親は答えた。

「いやいや、もしそうだったとしても、構いません。どっちにしても、もう助からない状態だったのは間違いないですから」

「とにかく、入院してもらって、私たちは安心しました」

 それでも最後に私は、「STさんを最期まで診ることができればよかったと思う」と付け加えて、STさんが亡くなったあとのご両親の挨拶に答えた。

*これで「自分はどうなってもいい」(若い顔面メラノーマの人の話)を終わります。次はどんな人が出てくるのでしょうか?ご期待下さい。


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