がんなんかに負けてたまるか(KNさんの場合)~残された自力でがんとたたかう

 しかし、その治療を続けた1年後、取りきれなかったリンパ節の大きさには変わりがなかったが、腫瘍マーカーが急に上がり始め、肝臓の転移が明らかになった。さらには、とうとう肺にも転移が出てきてしまったのである。

 しかし、KNさんには、それでもとくになんの自覚症状もなかった。

 主治医から、別の抗がん剤を試してみようと提案された。吐き気の強い薬剤を加えた抗がん剤治療である。KNさんは、主治医の言う可能性にかけて、その提案も受け入れた。

 しかし、この抗がん剤はきつかった。吐き気が今までとは比べものにならなかった。全く食べられなくなったのである。

 KNさんは、食べられなくなると体力が落ちて好きなことができなくなり、結局がんに負けることになると考えた。治療する相手のがんに負けてしまっては、元も子もない。したがって、KNさんはその治療をやめることにした。

 その点滴治療をやめることは、すなわちKNさんにとってすべてのがんの治療をやめることだった。残るのは、自分の体力だけだった。

 この体力を維持し、体力が続く限り楽しく元気に生きて行こう、楽しく好きなことをやっていこうと考えた。そして、がんが大きくなり痛みや苦しみが強くなったら、その時点でそれらの症状を取ってもらえばいいと決めた。今後受ける治療を、症状を抑える対症療法だけにすると決めたのである。

 残された自分の力でがんと闘う。病は気からである。KNさんは、死ぬ時も同じではないかと思う。死が向こうから迎えに来るのではなく、死ぬ人は自分から向こうに行ってしまうのだと思う。

 KNさんは、「自分から死にに行くことなどはしない」と心の中で強く思った。

※このブログが本になりました。「がんになって分かったこと~さまざまながんの素顔と元気な患者たち」という書名で、文芸社からの出版です。ネット販売もしています。

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