テーマ:メラノーマ

自分はどうなってもいい~STさんのご両親との話

 STさんは、最期を迎える直前、自分で折った千羽鶴の束をご両親に渡しながら言ったと言う。 「これは、ここに入院してから毎日折ってきたもの。やっぱり入院してよかった。いろいろ迷惑をかけてきたけど、これでやっと静かになれる。ありがとう」  お母さんは言う。 「やっぱり、あの子は優しい子でした。千羽鶴は病人に送るものなのに、…
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自分はどうなってもいい~入院後のあらまし

 私のところへ病院の担当医からすぐに連絡が入った。 「左の顔面の悪性腫瘍が頸部のリンパ節と胸椎に転移したものと考えるので、切除した腫瘍の検査をしたい。切除した腫瘍の一部を提供してはもらえないか」  この要請を受けて、ホルマリン漬けにしてあった腫瘍の一部を切り取り、病院宛に送った。  その後の全身検査の結果、STさんの顔…
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自分はどうなってもいい~週末に起こったこと

 その夜、STさんは久しぶりにすぐに寝つくことができた。夜中に痛みがぶり返して目覚めたが、すぐに座薬を使った。すると、痛みは少し楽になり、また眠ることができた。  STさんは、翌日、朝起きてみるといつも出るはずの尿が出ないことに気づいた。ただ、最初は気に留めなかった。しかし、そのあともまったく出る気配がない。  とうとう夜に…
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自分はどうなってもいい~STさんの家での手術

 私は、こぶの付け根のまわりのひげを剃っておくように言い、診療所へ戻った。  STさんの家にとって帰すと、STさんはこぶの付け根のまわりのひげを剃って横になっていた。 「では、このままベッドの上でこぶを切り取る手術をします」  簡易ベッドなので、低くて手術をやるにはあまりいい体勢ではなかったが、切除するこぶの茎の部分に…
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自分はどうなってもいい~初めての診察

 翌日、STさんの父親から電話があった。 「先生、息子が先生に診てもらいたいと言ってます。きょう、来てもらえますか?」  午後の予定表を見て訪問できる時間があるのを確認し、私が言った。 「午後5時ころにお邪魔します。よろしいですか?」  父親が答えた。 「では、よろしくお願いします」  午後の外来診療…
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自分はどうなってもいい~STさんとの初めての会話

 STさんは竹刀を杖代わりにして体を支え、父親に背中を押されてゆっくりと階段を上って行った。  その背中を見ると、第4から5胸椎のあたりで折れたように前に曲がっているのが見えた。痛みと足に力が入りにくいのとで、階段を上るのが本当につらそうだった。  やがて、二階に落ち着いたらしく、父親が戻ってきて言いました。 「息子が…
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自分はどうなってもいい~家での両親との話

 STさんのお宅へお邪魔すると、STさんは久しぶりにお風呂に入っているとのこと。母親が言った。 「息子は、診察は受けないと言ってましたが、そのうちにお風呂に入ると言い出しましたので、もしかすると体をきれいにして、先生の診察を受けようという気になったのかもしれません。お風呂から上がるまで待っていただけますか?」  私が答えた。…
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自分はどうなってもいい~初めての往診

 STさんの父親はすぐに役所に電話して、往診をしてくれる医療機関がどこにあるかをたずねた。役所では、市立の診療所である当院を紹介した。  STさんの父親が診察室に来て言った。 「先生、往診をお願いします。引きこもりの息子なんです。その息子のほっぺたに大きなしこりができていて、背中を無性に痛がるんです」 「先日、あまりに…
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自分はどうなってもいい~救急車を帰す

 その年の12月になると、STさんは背中に強い痛みを感じるようになった。  また、頬のしこりはますます大きくなり、頬からぶら下がるような恰好になっていた。さらに、左側の頸部には別のしこりを触れるようになってきた。  加えて背中のあまりの痛さに耐えられなくなり、うなり声を上げるようになった。それを聞いた両親は心配でたまらなくな…
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