手術はイヤ(THさんの場合)~サルビアの会(がん家族の会)へ

 THさんのご主人は、その後がん患者家族の会として毎月第一土曜日に開かれているサルビアの会に顔を出すようになった。

 しかしTHさんのご主人は、しばらくのあいだ、がん患者家族の集まりで妻の話をすることに躊躇した。がん患者の遺族として話を始めると、必ず涙が止まらなくなると思ったからだ。「オレは男だ」という気持ちがあったからかもしれない。

 しかし、THさんのご主人は会に参加して丸1年経ったところでやっと話を始めた。

「女房は早く逝きすぎたんです。まだ大丈夫と思っていたはずなのに命を落とすことになってしまった。初めから後手にまわるばかりで、なにもかも遅れてしまったんです。それが最大の悔やみですよ。」

 みんながTHさんのご主人に尋ねた。

「本当に治療の方法はなかったんですか?」

 THさんのご主人は、奥さんがどのようにしてがんがみつかり、その後どのようにして抗がん剤の治療を受けるに至ったか、そしてどのように最期を迎え、いま自分がどうしているかを話した。

 THさんのご主人の目は少し涙でうるんだように見えたが、涙が止まらないようなことにはならなかった。

*このブログが「がんになって分かったこと」(文芸社)という本になっています。電子書籍化もしました。どちらかをぜひ読んでみてください。

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