胸にふたつのしこりが(SSさんの場合)~早期の乳がん

 すべてのがんに共通することだが、がんは粘膜の表面の細胞から生まれる。粘膜は皮膚と同様に体内の組織を外界の刺激などから守る役割を持つ。それらをまとめて上皮という。粘膜も皮膚も上皮という体組織の一部である。

 上皮の中には血管やリンパ管は存在しない。ということは、体内にあるかのように思える粘膜は本当の意味の体内の成分ではない。体内には血液が流れるが、上皮にはそれがないからである。

 では、その境界はどうなっている?その境界の組織を基底膜と呼ぶ。細胞も血管も含まないコラーゲン線維などでできた膜状の構造物である。この上に上皮細胞が存在する。そして、そこからがん細胞が生まれる。

 ということは、がん細胞ができても基底膜の上に乗っているだけであれば、体内に入り込んでいないから、血液にもリンパ液にも触れることはない。つまり、それらに乗って広がること、転移することはない。この状態のがんを、上皮内がんという。

 だから、上皮内がんは、がんであってもまだ本当のがんではないという言い方もできる。早期がん中の最も早期のがんである。この段階で見つかれば、確実に治る。

 上皮内がんの状態で、乳管の中を広がり大きくなる乳がんがある。この状態ならば、リンパ節に転移することも、ましてや肺や骨に転移することも絶対にない。

 SSさんの乳がんは、この状態のがんから少し進んだ程度のがんと考えられた。だから、手術で完全に治ると思ったのである。

*このブログが「がんになって分かったこと~さまざまながんの素顔と元気な患者たち}(文芸社)という本になっています。読んでみてください。

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