どうして私が胃がんに?(UEさんの場合)~点滴を皮下注射で

 翌日、私の初めての往診の時には、UEさんのお母さんもご主人のお母さんとともにいた。UEさんの顔はやせてやつれてはいたが、目は明るかった。

 UEさんが、最初に言った。

「先生、これからよろしくお願いします。じつは、最初にお願いがあるんです。私は点滴の注射を刺されるのが嫌いなんです」

「もう刺す血管がないので、なんども刺し直さないとうまくいかないんです。それがつらいんです。長く抗がん剤の治療を続けてきましたからね。これをなんとかして頂きたいんですがどうでしょうか?」

 私は答えた。

「点滴をしなくて済むなら、それに越したことはないと思います。でも今のUEさんは、まったく食べることができない状態ですから、点滴を止めるということは命を縮めることだと思います」

「血管に針を刺されるのが嫌なら、点滴を皮下注射でやるのはどうですか?何日か毎に別の場所へ刺しかえる必要はありますが、血管注射ほど痛くもないし手間もかかりません。さっそく試してみましょう」

 UEさんが納得したので、すぐに皮下の点滴に替えた。太ももの皮下に注射針を刺し、そこから点滴を続けることにした。通常は、おなかの皮下に注射針を刺すことが多いが、UEさんのおなかは腹水が貯まっていたので、そこへ皮下点滴を行うことは無理だったからである。

 血管注射で使うのと同じ点滴用の針を使って刺し、金属針の外側の合成樹脂性の細いチューブの部分を留置する。そして、その上をテープでしっかり固定する。

 私はUEさんに聞いた。

「どうですか?」

 UEさんは笑顔で答えた。

「いいですね。これなら続けられそうです。ありがとうございました」

*このブログが「がんになって分かったこと~さまざまながんの素顔と元気な患者たち」(文芸社)という本になっています。読んでみてください。

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