どうして私が胃がんに?(UEさんの場合)~UEさんに続いた悲しい出来事

 私が帰ろうと訪問車に向かおうとした時、UEさんのお母さんが玄関から出てきて言った。

「娘は、ずいぶん大変な状態のようですね?あとどのくらい持つんでしょうか?半年ですか?1年ですか?」

 私は、どう言うべきかを考えながら口を開いた。

「そうですね。このままなにも食べられない状態が続くと、たとえ点滴を続けても2か月前後ではないでしょうか」

 それを聞いてUEさんのお母さんは口早に言った。

「そんなに短いんですか?そんなに早く私は一人っきりになってしまうんですか?」

 私は、どういうことかを確かめるために聞いた。

「どういうことですか?なにがあったんですか?」

 UEさんのお母さんが話し始めた。

「はい。実は、あの子の父親はおととし心筋梗塞で急死したんです。そしたら去年、あの子の弟が自殺してしまったんです。ですから、あの子が死ぬようなことになると、私はたった一人っきりになってしまうんです」

「ですから、それがいつ頃になるかを知りたかったんです。そんなに早いとは思いもしませんでした。でも、仕方がないですね。私がしっかりしないとね、あの子もつらいだろうから」

 私は言った。

「そうだったんですか。それは大変でした。UEさんもさぞかし心を痛めておられたんでしょうね。そこへ持ってきてこの病気ですから、UEさんは二重三重に苦しかったんですね?」

「実際にこれからどのくらいの命になるのかは、過ぎてみないと本当のところは分かりません。でも、苦しい命が長引くのは、もっとつらいでしょうから、これからできるだけUEさんの苦しみを楽にするにはどうしたらいいかを考えながら、診て行きます」

「では、もしUEさんにとくにお変りがなければ、私は来週来ます」

 UEさんのお母さんは深々と頭を下げて、見送ってくれた。

*このブログが「がんになって分かったこと~さまざまながんの素顔と元気な患者たち」(文芸社)という本になっています。読んでみてください。

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